英会話教室の開業者・経営者がハマる、“普通”の落とし穴

英会話教室の開業者・経営者がハマる、“普通”の落とし穴

カテゴリー:差別化, 英会話教室, 開業

小さな英会話教室を苦しめる“普通”の思考と行動

今回は、個人や小さな英会話教室の開業者や経営者がやってしまいがちな、教室の発展を危めてしまう経営と、その改善方法についてです。

前回の記事(個人の英会話教室を開業した、Aさんの話)で、英会話教室の経営に苦戦するAさんの話をご紹介しました。なんとか生徒さんをたくさん集めて、教室をもりあげていこうとするAさんですが、なかなか上手くいきません。

それはなぜなのか…。

Aさんの英会話教室の話から抜粋した、次の3つのポイントにフォーカスして、その理由をひも解いていきます。

  • テキストをベースに会話と文法学習をおりまぜた授業
  • 幅広くいろんな人たちに教室に来てもらいたいという思い
  • 生徒さんを集めるために新しいクラスをつくる

まずは、『テキストをベースに会話と文法学習をおりまぜた授業』についてです。

この授業スタイルについて、“普通”というのが私の率直な印象です。私以外にもそう感じる方は多いのではないでしょうか。普通だと感じるのは、多くの英会話教室やスクールでも同じような授業がおこなわれているからです。

となれば、厳しいようですが、英語学習者からしてみれば、他の教室で同じような授業を受けることができるのに、わざわざAさんの教室を選ぶ理由がないのです。

けっして、この授業スタイルを否定しているわけではありません。しかし、生徒さんを集めるためには、自分の教室を選んでもらう理由として、他の英会話教室にはない魅力をつくり、それを明確に示す必要があります。他の英会話教室の授業とは違う、Aさんの教室だけの、Aさんの授業だからこそ、学習者はAさんの教室にたいして興味を抱くのです。他の教室と同じようなことをしていては、いつまでたっても多くの英会話教室のひとつとしてしか認識されません。

このことは、生徒さんがすぐに教室をやめてしまうということにも関係しています。Aさんの教室に通っているから、この授業を受けることができるんだというふうに思ってもらえなければ、生徒さんは簡単にべつの教室や独学に変更してしまいます。場所の利便性や料金設定以上に、授業や教室の独自性が、生徒さんの心をつかみ、そして、つかみ続けるために重要なのです。

次に、『幅広くいろんな人たちに教室に来てもらいたいという思い』についてです。

生徒さんを集めなければならない英会話教室の経営者が、このような思いを抱いていたとしてもべつにおかしなことではなく、ごく“普通”のことでしょう。Aさんはこの思いをもとに、英語学習者みんなが共感・納得できるようなメッセージを、ホームページやチラシを使って発信してきました。おそらくこのようなメッセージを見た英語学習者たちが、Aさんの英会話教室にたいして悪い印象を持つということは、ほとんどないと思います。

しかし、それと同時に特筆すべきこれといった印象も残せず、AさんやAさんの教室にたいする興味がふくらむ可能性も低いでしょう。一概に英語学習者とはいっても、学習者それぞれの状況や状態は異なります。すべての学習者たちの納得・共感を得ようとするなら、どうしても、メッセージの内容はありきたりで平均的なものにせざるをえません。そうなれば、学習者の心を動かすのはとても難しくなってしまうのです。

では、自分の教室に強い興味を持ってもらうためにはどうすればいいのか…。

その答えはとてもシンプルです。Aさんがやっていたこととは逆に、具体的にどんな学習者たちに興味を持ってもらいたいのかということを明確に設定して、その人たちに向けてメッセージを発信すればいいのです。幅広くいろんな人たちに支持されようとするのではなく、特定の人たちからの強い支持を得られる教室を目指す。勇気のいることだとは思いますが、みんなに笑顔をふりまかなければならないという呪縛からは解放されます。メッセージを伝えたい人たちを明確に設定するからこそ、その人たちの心や立場に近づくことができるようになり、本当の納得・共感を得ることができるのです。みんなの英会話教室になる必要はありません。誰かのための英会話教室になればいいのです。

最後は、『生徒さんを集めるために新しいクラスをつくる』ということについてです。

これも特にめずらしいことではなく、多くの英会話教室で“普通”におこなわれていることです。生徒さん獲得に苦戦するAさんも、教室の経営改善のために、新しいクラスとして資格試験対策のクラスをつくることにしました。もともとあった通常クラスと新しい資格試験対策クラスによって、はたしてAさんは巻き返しをはかることができたのでしょうか…。

前回の記事では、資格試験対策クラスをつくったあとのことについて何も言及していませんでしたが、残念ながら、Aさんの教室の経営は大きく改善することはなかったのです。

それでも、Aさんが新しい挑戦として資格試験対策のクラスをつくったことについて、私は無駄な行動だったとは思いません。いろいろなアイディアを試してみるというのは、とても大切なことだからです。しかし…、通常クラスとの両立は避けるべきでした。

本気で、資格試験対策のクラスで生徒さんを集めるつもりでいるのなら、とにかくその資格試験対策クラスだけに絞って、Aさんの時間と労力を投入するべきだからです。数種類のクラスを成り立たせようとすると、限りある時間と労力は分散されてしまい、どのクラスの質も中途半端なものになってしまいかねません。資格試験対策クラスに集中することで、経験と実績を堅実に積み重ね、Aさんが資格試験対策のエキスパートになってこそ、資格試験対策を本気で臨んでいる人たちはAさんの教室に集まります。

基本的に弱い立場であることが多い個人や小さな英会話教室が、大手を含め数ある英会話教室のなかから選択され、本当に必要とされるためには、どんな商品でも揃うデパートではなく、特定の商品にめっぽう強い専門店のような教室になるほうがいいのです。

ここまで、なぜAさんの教室の経営がうまくいかないのかを探ってきました。先にご紹介した3つのポイントは、どれも多くの英会話教室で見られる、“普通”の思考や行動です。そして、Aさんの教室を苦しめる要因は、実はこれら3つのポイントにあったのです。つまり、“普通”でいるということが、教室の発展を遠ざけていたのです。

まさしく、“普通”という名の落とし穴です。

“普通”にハマる3つの理由

そもそも、なぜ、“普通”の思考や行動になってしまうのでしょうか。

3つの理由が考えられます。

理由1:『英会話教室に対する固定観念』

これまでの経験や、他の教室から得るイメージによって作り上げられた英会話教室に対する観念が、無意識のうちに固定されている。
その固定された英会話教室の観念をベースに、英会話教室とはこういうもの、授業とはこうするもの、というように、普通の思考や行動について疑いを持たない、考えない。

理由2:『情報の不足』

業界に関係する・しないにかかわらず、情報が不足していると、教室の進むべき未来についての予測を立てるのが、非常に難しくなる。そのため、今後、自分や教室がしなければならない努力の方向性を見失ってしまう。
結局は、自分の教室の現状にかかわらず、他の教室がやっている普通の思考や行動をやみくもに真似てみるしかない。

理由3:『経営戦略がない』

経営者は、どのように教室を経営しようと自由。しかし、経営に慣れない頃は、自由をうまくコントロールしきれないことのほうが多い。
その不安定で悩ましい自由のなかにいて、状況に応じて何をどうすればいいのかを示してくれるのが経営戦略。その経営戦略がなければ、情報不足の場合と同じように、いきあたりばったりで、普通の思考や行動を重ねざるをえない。
それどころか、時と場合によっては、感情に左右されて普通の思考や行動すらできなくなることもある。

差別化戦略で、選ばれる英会話教室に

前回の記事で、個人や小さな英会話教室に適した経営戦略をご紹介していきますと書きました。

その経営戦略とは、『差別化戦略』です。

他の英会話教室と差別化することで、自分の教室が選ばれるようにするための戦略です。普通の思考や行動とは、方向性がまったく逆になります。

差別化という言葉自体は、べつにめずらしいものではありません。しかし、多くの英会話教室が存在する今のような時代にこそ、優れた効果を発揮するのが、この差別化戦略です。前述した、“他の英会話教室と違う授業をする”、“特定の人たちからの強い支持を得る”、“時間や労力を投入する対象を絞る”といった改善案も、この差別化戦略に含まれます。

英会話教室を開業すれば、周りは大手をはじめ、先行する教室ばかりです。“普通”では負けてしまいます。そして、いきあたりばったりの経営では、教室の未来をただ運任せにするのと変わりありません。他の英会話教室にはない自分の教室の魅力を、戦略的に育て、他の英会話教室と差別化することが大切なのです。

差別化は、教室の発展を力強く後押ししてくれます。

次回の記事からは、差別化戦略とその方法について詳しく見ていきます。